Vol.05(後編)2010年9月発行
金融機関は融資の是非をどう判断するのか。
銀行側の視点を理解し、 与信を得ることができる会社にする。
景気の先行き懸念が増大し、リスケによって資金繰りを凌いだ企業も銀行による見直し時期が迫っている。どうすれば銀行から与信を得ることができるのかと、悩む企業経営者も多いに違いない。銀行勤務で長年に渡って企業融資を手がけてきた板谷だからこその観点から、金融機関による企業評価や融資を行う際の視点、さらには与信を高めるポイントを語る。
■後編:不透明な時代だからこそ重視される、 収益性や成長性を高める■ 銀行側の視点に戻って、次は企業評価のポイントを説明していきます。まず第一は、会社の財務的な安全性で、つまりB/Sがどれだけ安定しているのか。これは自己資本にどれだけの厚みがあるかで、今までの収益の蓄積で内部留保が積みあがって、資本の厚い会社になっているかということです。逆に負債の部分が多いと、借入れに依存している会社ですから安定的とは言えませんね。このように企業が成長していく過程のなかで安定した会社に育っているかどうかを、銀行はまず見ています。 最終の収益がいくらあがって、次にB/Sのバランスを見たときに過去の収益の蓄積がしっかりとあれば健全な会社に育っていると評価します。逆に、20年、30年の歴史があっても自己資本が非常に薄い会社があります。過去にいろんな面で収益を圧迫される要因があって、内部留保に資金が蓄積されていないと、財務体質が脆弱と言わざるを得ないですね。 税引後当期利益の外部流出控除後が内部留保に積みあがっていくわけですから、体力的に安定した会社にするためには基本的に当期利益をあげる必要があり、総合的な収益マネージメントが必要です。本業の収益がベースとなり、為替差益やら保険・レバレッジドリースなどの損益など、当期利益に至るまでは様々な要因がありますからね。 もう1つのポイントは収益性や成長性で、将来に渡ってこの産業、この事業は儲かるのかどうかは当然のことながら評価の対象となりますね。儲かっている企業、事業なら別に問題はないのですが、斜陽になっている事業や産業に関わっている場合は非常に気にします。
しかも、最近の経済ニュースでも何年ぶりかで産業DI(Diffusion Index=増加・好転した企業割合から減少・悪化した企業割合を差し引いた割合)がマイナス指数になったと報じられるなど、景気の先行き懸念が増大していますからなおさらですね。時を同じくして、前述の中小企業金融円滑化法案によってリスケをして、資金繰りを一時的に凌いだ企業に対して銀行が見直しをする時期が迫っているわけです。見直しに際して「1年間資金の返済を猶予したのにぜんぜん収益力が改善していない」と見なされると、非常に危険です。収益改善の見込みがないと判断をしてしまい、銀行の姿勢は厳しくなってしまいますから。 見直しのときに、銀行は「では今後はどうなるんですか」 ![]() と必ず聞いてきます。それに対して具体的な数字で方針を答えることができればいいですが、難しい場合には、ぜひ会計士の先生やコンサルティング会社を使っていただきたい。どうやれば金融機関は納得し、その企業に対してリスクテイクするかということを考えて、合理的な数字の組み立てをすれば、銀行は今後のリスケ支援を含めて取引継続方針を策定するわけです。 これから景気が悪くなるということは当然、受注が減って売上げが落ちる懸念があるわけですから、売上げが落ちても雇用が維持でき、黒字が維持できる体質をいかに作るかが、極めて重要になってきますし、銀行の目もおのずとシビアになってきます。そのためには、たとえば損益決算書を見て、人件費をいじれば最も収益が上がりやすいので、じゃあ人件費をリストラしようとなりがちですが、実は徹底的にリストラするのは別の部分なのです。と言うのも、これまで育ててきた貴重な人材を大勢辞めさせてしまいますと、いざ打って出る際に競争力がなくなってしまっていますからね。 それよりも、商売の原点である売上げ総利益や粗利益をいかに高く維持できるかを考えて、仕入れ値などのコストを徹底的に見直すことが肝要です。最近、新聞や書籍などで原価計算に関する番組や記事が多いことからも、重要視されていることがわかりますね。 もちろん、銀行としても、まず本業がしっかりしているのかどうか、本業に対する収益力がきちんと維持できているのかどうかを評価対象として見ています。原価計算をきちんとやって粗利率を高めようとしても、競争が厳しければやはり商品を安く売らなければいけませんから、どうしても利益率が落ちてしまいまいがちですが、そのときに競争に耐えうるだけの販売管理費の圧縮を図れているのかどうかまで見ていくと思いますね。 現在のように景気が悪くなり、またイノベーションによる産業構造の変化のなかで、企業淘汰はいつ始まってもおかしくない状況にありますよね。最終的には競争力があって収益力の高い企業しか、生き残れないでしょう。そう考えると、ジリ貧の会社で新商品の開発もせずに昔からの商品を大事に作っているような会社は、社会的に競争力が落ちてきますし、つまり収益力もどんどん落ちていきます。これは銀行に対する信用がどんどん落ちることでもありますから、資金調達ができなくなり、最終的には金繰り破綻ということになりかねません。 そうなる前に、事業を廃止してしまうとか、斜陽の部分を切り離して先端の部分だけで生き残りを図る企業もあります。このようなケースには、企業再編という財務的なテクニックが必要となり、最近のサイベックのコンサルティング実績としても増えていますね。 具体的には、たとえば事業の多角化ということで、本業は製造会社でアイスクリームが売れるからと卸をしてみたり、ケータイ電話などの代理店をフランチャイズで始めたりだとか、多分野の業種に事業を広げたけれど、現在ではうまくいっていないケースが多いんですね。そういうときには、全体を見渡してどの事業を最終的に残していくべきかを戦略的に考えるわけです。そのうえで、企業をどう分割して、売却するなり、清算するなりを考えていきます。 ちなみにイノベーションによる産業構造の変化の中では、必ずしも本業を維持することに固執する必要もないですね。会社のなかには本業を残したい気持ちがあるでしょうが、臨機応変に業態転換をしていくということも大切ですし、本業が斜陽産業だったら見直しの時期にきているということですね。 このように業績の悪い事業を撤退して、良い事業だけでやっていけば、当然、収益率が良くなるわけです。たとえば本業の収益率が20%で、副業の事業は進出したときは30%あったが、現在は10%に落ちてしまったとすれば、20%と10%の平均で収益率は下がる。だから、本業だけを残して副業を廃業すれば収益率を高く維持できるわけです。 「でも、副業は収益率が低くても利益をちゃんと出しているじゃないか、売上げもちゃんと上がっているじゃないか」と言う方も実際にいらっしゃると思います。たとえば「本業が50億円で、副業は10億円の売上げをあげて、1000万円の利益をあげているじゃないか。かたや本業は5000万円の利益を上げているから、トータルで6000万円の利益が上がっているじゃないか」と。ところが、そこには落とし穴がありまして、今後に本業か副業の売上げがどんどん落ちていけば、収益率は同じですから、ある一定の段階で赤字転落するんですね。要は収益率の低い副業に人件費などの固定費、経営資源を投入しているわけですから。 そこに至る前に、副業に投入していた経営資源を本業に回して本業に力を入れ、副業を撤退することで経費を圧縮して本業の収益力を高めるのです。副業が赤字なら分かりやすいのですが、この例のように利益が上がっていると、残すか否かが論点になってきます。また、撤退する場合にもさまざまなシミュレーションや工夫が必要になりますので、サイベックの経験やノウハウを生かしていだけると思います。 では、企業再編について具体的にご説明します。サイベックがお手伝いさせていただいた会社の場合は、1ヵ月ほどで大体の方針を決めてしまい、それに則って分割の作業を行っていきますから、半年もかからないケースが大半です。逆に言えば、悠長に時間をかけていては手遅れになりかねないので、短日時に終わらなければならないのです。 分割する際には、たとえば資産の売却などを伴いますから、当然、売却損が出たり、売却益が出たりします。売却益が出る際に注意すべきは、たとえば不動産は昔から所有していると、とてつもない含み益を有している場合があり、それを完全に売却してしまうと、恐ろしい額の税金が発生してしまうのです。足もとのお金がないところに、高額の税金を払わないといけなくなる。銀行はそんな納税資金は貸さないですから、結果として資金繰りが狂ってしまいますね。 要は資産を処分して売却損益が出たときに、それを有価証券の売却益で調整するなど通算できるものが必要ですが、最近はこのあたりの税制が厳しくなってきて損益通算ができる手段が減ってきています。以前はこういう手段があったという観点でやっていくと、痛い目をみることもありますから、税務リスクもきちんと考える必要があります。たとえば、赤字の時に、含み益が出る物件を売ればトータルの利益がそれで相殺されますよね。そのあたりの工夫だとか、売却するタイミングを考える必要があるのです。 銀行に対する与信を高めるという問題と、税務コストを下げるという問題は、このような場合などでは背反してしまいますからトータルで考えないといけないし、トータル的に充足させるには相当のノウハウや経験が必要ですね。サイベックのように、私のような金融担当者がいて、税理士や会計士がいて、それをサポートするスタッフがいるコンサルファームだからこそお手伝いできる案件だと思います。 ![]() (取材風景)
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